2015年10月15日木曜日

許すな!差別・排外主義 10・18ACTION の報告


 私たち「差別・排外主義に反対する連絡会」は、毎年秋に新宿・大久保地域で、差別・排外主義に反対するデモ行進をしています。今年も、10月18日に100名弱で歩きました。新宿駅の西口ロータリー・南口と新宿三丁目交差点、そして歌舞伎町地区をかすめてコリアンタウンである職安通りです。
 2011年に始まった取り組みも、今年で5回目になりました。「生きる権利に国境はない!私たちの仲間に手を出すな!」をメインスローガンに掲げるこのデモは、新宿・大久保の両地域で商業を営み、あるいは生活するさまざまな国籍の在日外国人の人たちに連帯をアピールするものであるとともに、新宿の街を行きかう人々に、排外主義 (レイシズム)との闘いに立ち上がることを呼びかけるものです。
 2012年から2013年は、コリアンタウンである新大久保商店街が、毎週のように排外デモの脅威にさらされました。カウンターと呼ばれる現場での抗議行動や反対世論の盛り上がりにより、今はこのデモは行なわれなくなっています。これは闘いの一定の勝利ではありますが、私たちはこの地域でのデモ行進を続けています。
 なぜなら、街頭でのヘイトは下火になったとしても、極右安倍政権の下で政府・国家レベルのレイシズムが強くなっていると考えるからです。第2次安倍政権が発足してから垂れ流されている右派政治家やそれに連なる文化人の暴言の数々は、ヘイトスピーチそのものです。私たちは、「ヘイトとの対抗というラインを越えて、(ヘイトを生みだす)歴史的土壌と対抗していく」(10.18当日の基調提起)という認識に立って取り組んでいます。その認識を共有してレイシズムとの対抗を共同で担える仲間を作りたい、そしてその仲間と共に歴史の審判に耐えうる連帯共闘を作っていきたいというのが、私達の想いです。この日のデモをそんな趣旨で企画しました。
 当日はその趣旨に沿って、「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」「反天皇制運動連絡会」「『国連・人権勧告の実現を!』実行委員会」「辺野古リレー」「APFS労働組合」の5つの団体から連帯の挨拶をいただきました。さらに、ニコン「慰安婦」写真展中止事件裁判の支援に関わっている方からのメッセージもいただきました。
 皆さんが語られる内容からは、この国の政治そのものが差別・排外主義にまみれていること、それが社会のあり方に影響をおよぼしていることが、よく理解できました。そのそれぞれの発言・メッセージの趣旨をご紹介します。

☆「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会
 2012年に発足した第2次安倍政権の初仕事が、高校無償化から朝鮮学校を排除するために、文部科学省の省令を改悪することだった。理由は「拉致問題の解決に進展がない中で朝鮮学校を無償化の対象にすることは、北朝鮮に誤った信号を送ることになる」という、極めて政治的なものであった。文部科学省のホームページには、この趣旨の説明がいまだに掲載され続けている。
 しかし、全国5ヵ所で起こされた裁判において、国を追い詰めている。
☆反天皇制運動連絡会
 SEALDs(シールズ)の中心メンバーの父親が、天皇制に反対しているということで週刊誌でバッシングを受けている。天皇制に反対することがまるで罪であるかのように扱われてしまう現実がある。
 しかし、天皇を媒介に統合されるのとは違った自律したさまざまな民衆運動が広がっている。今年の8.15反靖国デモでは、妨害を企てる右翼で埋まった歩道上で「安倍政権やめろ」というプラカードを掲げた人がいて、デモに声援を送っていた。

☆「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会
 国連から日本政府に対して100以上の是正勧告が出されているにもかかわらず、日本政府は「従う義務はない」として無視している。しかし、国際条約は憲法の次に重視しなければいけないもの。国際的には、安倍政権は極右政権と認識されている。
 勧告を受けているさまざまな人権課題に個別に取り組んでいるそれぞれの運動が一緒に動くことでこの国のあり方を変えられると考えて運動を進めている。

☆辺野古リレー
 全国の0.6%の面積の沖縄に74%の米軍基地が集中しており、そこにさらに新基地を作ろうとしている。沖縄差別である。ゲート前のテントに、日の丸を掲げた右翼が襲撃してきている。国家は差別・排外主義を原動力として侵略戦争を行なっていくが、沖縄はその体制を作るための最前線になっている。絶対に阻止しなければならない。多くの人がゲート前に駆けつけてきてくれている。

☆APFS労働組合
 2014年、5,000人の難民申請があったが、そのうち難民として認定されたのは、わずかに11人である。政治難民が多くいるのに、「難民鎖国」といってもいい状況。一方で、シリア難民の写真を使った排外主義的なイラストが広がった。
 社会保険や雇用保険にも入れてもらえず、残業代も払われない。毎日の生活で差別されて小さくなって暮らしている人が非常に多い。使い捨ての労働力として酷使されている。国籍・文化・言語の違いを越えて、すべての人が平等に安心して生活できるようにしたい。

☆ニコン「慰安婦」写真展中止事件裁判の支援に関わっている方(メッセージ代読)
 2012年に、安世鴻さんの「慰安婦」写真展が、ネット右翼の妨害を恐れていったん中止になった。ヘイトスピーチがいろいろな所で展開されている中で、日本の負の歴史に向きあう表現の場を守ってくれたことが、支えになっている。
 脅迫を受けた時に、恐れてやらないのではなく、冷静に対処するように具体的な方策を考えることが、力になる。

 皆さんの挨拶からは、国連からの勧告を無視し続け(すなわち国際スタンダードに背を向け続け)、排外主義政策を取り続け、そして戦争政策を強引に押し進める政府の姿勢がよくわかります。デモの最中の警察は、例年にもまして過剰警備の態勢を敷いてきました。さらには、差別暴言を吐いた警官もいます。これらは、安倍政権の下での「国家のヘイト化」の一つの表れかもしれません。
 一方、今年のデモで特筆すべきことは、沿道ビラの受け取りの良さです。用意したビラがほとんど残りませんでした。今までの5年間で最高の受け取りでした。
 歌舞伎町をかすめる新宿区役所通りや職安通りは、在日当事者が多いこともあって、いつも受け取りがいいわけです。今回はこれに加えて、たとえば新宿三丁目交差点のような当事者が多いわけではない地区での受け取りのよさを感じました。
 また、小滝橋通りに近いあるビルの1階部分、そのフロアは一つの会社で占めているのですが、外に出ていたその会社の制服姿の労働者(すなわち、みんな仕事中ということ)のほぼ全員がビラを受け取りました。ビラを読んだ労働者が同僚と「当然だよな」と会話を交わしているのが聞こえてきました。
 「ヘイトを許さない!」という声が、街往く人々にとって抵抗感なく受け止められるようになったことの表れでしょう。さらには、政治が危険な方向に向かっていることへの危機感が、広く浸透していることの表れともいえるでしょう。
 また、1週間前の12日には、大久保通り・職安通り沿道の商店に、デモ行進をすることを知らせする予告ビラを配布しました。これも毎年やっている恒例の行動です。いつものように反応は上々でした。
 反応がダイレクトに返ってくるデモは、元気がでます。闘いは街頭で!