2014年10月22日水曜日

【10.5Actionの報告】

許すな!差別排外主義 10.5 ACTION

~生きる権利に国境はない! 私たちの仲間に手を出すな!~


 差別・排外主義に反対する連絡会は、別掲の9・21集会とワンセットでこの日のデモを企画した。あいにくの大型台風が接近し、前夜からの土砂降りの雨を突いて、100名に及ぶ人たちが参加した。
10.5Actionビラ日本語版10.5Actionビラ・ハングル版

 主催者発言-差別・排外主義に反対する連絡会の結成以来、重要な柱として、攻撃を受けている当事者とどう繋がっていくのか、私たちの役わりは何か、自分たちの中にある差別意識を抉り出し、捉えかえそうとしてきた。
集会の前日には、デモの趣旨を書いたビラを持って職安通りデモコースの店1軒1軒を訪ね、私たちの声を届けて来た。何軒かの店では、「配るから何枚か置いて行って欲しい」という熱い申し出もいただいた。
ヘイト・スピーチに対する国連の勧告が出るなど一定の反撃が行われているが、朝日新聞バッシングや元記者への脅迫、レイシズムの嵐が続いている。又、カウンターの中にもある女性差別的傾向やナショナリズム的傾向については共に議論し、捉えかえしていかねばならない。歴史に耐えうる行動、社会的包囲網を作り、地域に声を届けていきたい。
 
 次に、いくつかの団体から、連帯の挨拶をいただいた。
 高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会-朝鮮学校だけが、高校無償化から排除されて3年半。高校生62人が勇気を持って、国賠訴訟に踏み切ってくれた。先日行われた第3回口頭弁論で、弁護団長が、「人種差別撤廃委員会から厳しい勧告が出ている中で、世界が注目している裁判であることを忘れないで欲しい。この高校生たちが、なぜ排除されているのか。その事にきちんと答えうる裁判にして欲しい」と、諭すようにもの静かに語った。裁判長はじっと聴いていた、と報告した。
 反天皇制運動連絡会-右翼が政権中枢を占めている中で、警察や軍隊の役割が強くなっている。昨年の国家秘密法以降、警察の捜査への批判が強まる中、それをひっくり返して、情報を集中させる仕組みを拡大しようとしている。これに対抗する地道な活動を行っていきたい。敗戦の「詔勅」でヒロヒトは、「国体が維持された」と言っている。日中戦争の最中、あらゆる運動を叩き潰して来た治安維持法に、37年、「国体の本義」を確定させ、それを引き継いで戦後が出発している。だからこそ、天皇制、思想管理と闘っていきたい。
 米軍・自衛隊参加の防災訓練に反対する荒川・墨田・山谷&足立実行委員会-2000年、石原都知事のビッグレスキュー以降、防災訓練に反対し続けて来た。高校生の自衛隊宿泊訓練や、「職場体験」と称する入隊など、当事の衝撃が今では当たり前になっている。関東大震災時の朝鮮人虐殺を許さず、排外主義と闘って行く、と決意を述べた。
 「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会-政府が、「従う義務は無い」と、従来の姿勢に終始している中、勧告を生かすも殺すも、私たち次第である、と訴えた。
 争議団連絡会議-「一人の首切りも許さない。現場に戻る」事をモットーに、中には40年闘っている人もいる争議団で構成されている。現在、経営者の自宅への団交要求行動に対して「1日当たり20万から100万円を経営者に支払え」という裁判所の決定が出される中で闘っている。安倍政権が戦争のできる国家へ突き進む中、国民の考え方の根底にある差別・排外主義と闘っていきたい。
 
 集会終了後、デモに出発した。デモは、柏木公園から新宿の繁華街を通り、悪天候にもかかわらず4㎞近いコースを意気軒昂に貫徹した。沿道の注目を浴びビラの受け取りも良かったことも併せて報告しておきたい。

差別・排外主義にNO! 第3回討論集会の報告


<在特会>は、なぜこうした人々を憎悪するのか?

 このたび、差別・排外主義に反対する連絡会主催による「9.21差別・排外主義にNO!第3回討論集会」を東京・文京区民センターで開き、約100名の参加を得ました。昨年12月の「2013年を振り返って-何が起こっているのか?何が問題なのか?」、今年2月の「攻撃された当事者は何を思う?私たちはどう繋がるか?」に引き続き、今回のテーマを「<在特会>は、なぜこうした人々を憎悪するのか?」とし、長年にわたって取材を続けてきたジャーナリストの安田浩一さんからの報告と、在特会からの攻撃のターゲットとされる運動を担ってきた方々によるパネルディスカッションを集会の柱としました。
 まず司会が、連絡会の簡単な紹介とこの間の情勢を概括し、在特会の攻撃対象が在日外国人から反原発・天皇制・生活保護・部落問題・等と様々な分野へと広がっている状況の中で運動側の横の連携が不十分ではないかとの懸念を示し、相互認識を深め模索しながらも連帯しながらそれぞれの運動を広げていきたいと、本集会の趣旨を語りました。

 集会の第一部は「報告 <在特会>が憎悪の対象とする人々」として安田浩一さんからお話をしていただきました。
 これまで在特会の話は十分にしてきたとしながら、まずは在特会をご自分にとっての大きな取材テーマとした発端から話してくださいました。
 「様々な局面で外国人問題を取材してきたが、その中に研修生・実習生の存在があった。制度の理念としては外国と日本の交流やら技術移転やらがあったが、実際には低賃金の出稼ぎ労働者という存在。しかも研修生・実習生とすることで労働者ですらない。正当な労使関係を結ぶ必要がない支配・従属の関係でしかない奴隷的立場に置かれている。法的最低賃金は保障されず、パスポートも預金通帳も帰国まで雇用者が預かる。就業の際の同意書には、雇用者に逆らえば直ちに強制帰国させるという項目がある。訪日の際には保証金等が必要で借金を抱えているので帰国の危険は冒せない。労働運動への関与の禁止のみならず、携帯電話所持禁止・ネットカフェ等インターネット環境への接触禁止・恋愛禁止・等々まである。
 大きくはグローバルな新自由主義的経済構造の中で起こっていること。大企業の下請けの中小零細企業は生き延びるためにこの制度に飛びつく以外にない。とは言え、労基所への密告の報復として全員に往復ピンタを食らわせる場面も目撃したことがあるが。中国にある日本へ行くための研修学校の取材では、根性・忍耐・従順さを叩き込んでいるという説明を受けたこともある。
 帰国直前に貯金額が予定額に達していないと知らされて帰国を拒んで逃亡した中国人がいた。彼は各地を転々としながら職を得る中で、職務質問を避けようとした挙句に警察官に射殺された。これに対して遺族が国賠訴訟を起こした。この提訴に対して後に在特会へと合流する(現在は断絶)西村修平なる人物がネット上から呼びかけて、裁判所前でヘイト攻撃が展開された。これが自分と在特会的存在との出会いだった」
 「そもそも在特会だけが問題なのではなく、社会に在特会的な空気が蔓延していることが問題。元朝日新聞記者の再就職先にクレームを入れて解雇に追い込むのみならず家族までもターゲットにする。韓国ドラマを放映するフジテレビ・そのスポンサーの花王・反ネット上のデモを根拠に反日韓国人に仕立て上げられた女優をCMに起用したロート製薬も攻撃されるという状況。
 お笑い芸人が発端として発生した生活保護問題も在日問題と絡める形で拡大していった。行政への密告が増大し、それに迎合して密告ホットラインを設置した自治体が12はある。外国人の生活保護受給は行政措置とした最高裁判決は、ネット上では違憲判決が出たと捻じ曲げられている。
 水俣病患者、ハンセン病患者、広島・長崎の被爆者までもが攻撃を受けている。」
 「こういうバッシングが運動として広がっていってしまっている。今まで、運動と言えば、それは権利を勝ち取るための運動だった。それに対して、これらは権利があると思う人を引き摺り下ろす運動としてある。戦後民主主義の中でぎりぎり勝ち取ってきた僅かなものを奪い取ろうとする。
 これには彼らが抱く喪失感・奪われた感が根拠としてあると思う。しかし、彼らはその解決のために強い方には矛先を向けない。例えば、年間3万の自殺者のうち2万人が経済的理由による。これを福祉の貧困と捉えて改善を求めるのではなく、在日外国人が生活保護を独占しているのが原因であるというデマに飛びつき弱者に憎悪を向け攻撃する。
 また、このように敵を発見して叩くのが目的化もしている。ありもしない在日特権がネット上で捏造されているのが好例。」
 「被害者が受ける傷みを切実には理解していないと弾劾された経験がある。被害者が存在し、更に日々生み出されていること、当事者の受ける切実性を感じる必要がある。解決の努力を当事者のみに任せておいてはいけない。こういう社会をどう変えていくかの議論が必要。」
 様々な具体的事例を挙げながら深刻な状況を語られ、
 「表現の自由は間違った対置がなされている。表現の自由を奪われているのは弱者の方。沈黙を強いられているのは攻撃されている側。
 ヘイトスピーチは『言葉の暴力』ではなく、単なる『暴力』」と締め括りました。

 第二部のパネルディスカッションを開始する前に、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会にお話しいただきました。 
 「安倍のひどさは皆感じているだろうが、在日の人々はどれだけ長期間にわって差別の中で生きてきたかを考えて欲しい。昨年の国連人権勧告に対して、文科省は罰則規定がないからと一顧だにしなかった。他の課題についても政府はすべて同様な態度を取った。今回出た勧告でも政府が態度を変える展望はない。これに対して市民運動を大きく作る必要があると、諸課題を担う人々が共同で闘う体制が実現し、集会・デモを開催している。また、無償化排除に対して高校生が原告となった裁判も始まっている。」と切実な報告と闘いの必要性が提起されました。

 休憩を挟んで第二部のパネルディスカッションに移りました。
 
司会によるパネラー紹介の後、それぞれに語っていただきました。
 部落解放同盟奈良県連からは、まず水平博物館への差別街宣と裁判の概要が語られました。そして、博物館を被害者とすることで裁判には勝ったが、差別街宣自体は刑事罰にならないこと、不特定多数への差別発言は名誉毀損や侮辱罪が適用困難なこと、法務局の対応が何の効果もない形ばかりの物だったこと等、問題点も多く残されたとも。また、奈良の排外主義的動向について、「慰安婦」問題や住民投票に取り組んでいた議員や委員に対する自宅街宣でノイローゼから辞職に陥れた事例、排外主義企画への公共施設使用許可取消し要求が却下された顛末、強制連行や慰安所に関する公共の掲示板を天理市が撤去したことへの取り組みと共に、休校になっていた朝鮮学校がまずは幼稚部から再開する運びになったことを報告した。

 反天皇制運動連絡会は、冒頭に「これまでの発言を聞いて、攻撃されている被害者といっても自分たちは同列ではないことを思い知らされた」と表明。デモが受けている攻撃の状況を報告する中で、在特会は街宣右翼ほどの思想を持たずに「ハンテンレン」という記号を攻撃しているだけだが、現場での行動・体験により内面化していく部分もあると注意を喚起。デモに対する激しい攻撃を加える街宣右翼結集の形を作ったのが在特会だったと、その存在の社会的問題性を指摘。天皇制批判の言論を拡大し、その観点から排外主義を問題にしていきたいと語った。また、ヘイトスピーチの法的規制について、現在は在特会寄りになっている警察の恣意性を制約する意味があると提起。表現の自由一般を問題にするのではなく、内容的に議論していくことが重要と訴えた。

 脱原発テントひろばは、まずテントをメインターゲットとして攻撃しているのは街宣右翼ではなく在特会と報告(街宣右翼は別なメインテーマのついでにテントを扱うだけ)した。彼らの持つ暗い雰囲気と凡庸さの中にある理解不能な凶暴性を人間の本質から捉え返す必要があるのではと提起。自民党の中に広がる安倍に異論を出さず大勢に従う空気が市民社会に広がる可能性、異物を見つけ出し攻撃対象に仕立て上げることが大衆運動として成功していること、の危険性を指摘した。

 「慰安婦」問題に取り組む女たちの戦争と平和資料館は、在特会が登場する以前から政治家やメディアを通したヘイトがあったこと、その中で資料館の設置場所も慎重に考慮したことを紹介した。そのため現在、在特会は集会を開催する施設やそこに入っている無関係のテナントに攻撃をかける手法が主となっていて、そのために行政や政治家が二の足を踏むようになるのではないかとの危惧を表明。弁護士をそろえると共に闘える人を揃える必要があると確認。一方、若い人が最初に誰と出会うのか、最初に出会ったのが在特会という若者が多いのではないか、と運動の拡大の必要性をあらためて確認した。

 パネラーの最後に差別・排外主義に反対する連絡会メンバーから。攻撃する側が在日から生保・沖縄・等々と課題を広げる中で、シングルイシューで対抗できるのか、ターゲットにされた人たちが孤立しない様な連帯関係を作る必要があり、在特会に対する社会的包囲網を作っていきたい、またそれが反安倍の大きな体制にも繋がっていくと展望。在特会に対するカウンター勢力の大衆性を評価する一方で、散見される差別的姿勢・自己を日本人として肯定する前提等の克服課題の存在を指摘。検討課題として、法制化・国連勧告の認知度・表現の自由・グローバリズムや格差の拡大を通した国家への服従を要求する動き・等々を揚げ、これらを分析して捉えながら連帯・共闘するための議論の場として本集会があり、少しずつ入口をひろげているのではないかとの自負を表明した。

 最後に会場からの質問にまとめて回答する形で、安田さんから。安倍内閣は、在特会的空気をまとい、在特会的な者が在籍し、在特会を肯定している、そういう内閣として認識する必要性があると提起。レイシストとして生まれる者はいないが被害者意識に陥りやすい人はいる、最初の出会いが重要であり、その意味で情報を与えているメディアと政府の責任は重いと指摘。生保の受給率は減っている(受給者数は増えているが)・補足率も成果的に見て低い・不正受給はわずか0.38%で最大要因が高校生のアルバイト・外国人犯罪で犯罪件数が増えているというのも事実は逆・等、ネットのデマに対抗して繰り返し正確な情報を伝えていく必要を訴えた。

 司会から、これからの議論の必要性をあらためて訴え、本集会がその足がかりになったと確認しました。また、10月5日のデモへの参加を要請させていただき、交流会へと移行しました。